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ひたむきな愛
そう! 毎年7月、梅雨の明けた後、山のすそ野や谷間を歩くと、羽をひ らひらさせながら、ゆっくりととぶ、虎斑模様の腹をした、鹿の子斑の羽の 昆虫が飛び回っているのに出会います。それが、カノコガです。 見る人によって模様は虎斑にも見えるし、鹿の子まだらにも見えるのです ね。だから、「鹿の子蛾」というのでしょう。この昆虫の群れは、ぼんやり 飛んでいるわけではなく、恋の相手を一生懸命捜しているのです。一休みも せず、ゆっくりとはばたきながら、右に移り、左に折れて、真剣に恋の相手 を探しているのです。 一年に、ただ一度の機会を逃すまいとして、静かに激しく求め合っている のです。ようやく恋の成就したつがいは、ひたむきに求め、ひたむきに交わ り、子孫を残します。 でも、このが蛾が目の前をよぎっても、何かがいた、としか感じない人も おおいのです。足を止めて眺めている人は、相当なもの好きです。 2003/02/01 塙 泉 |
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