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「カトレヤ」の思い出
私が「カトレヤ」という言葉を知ったのはいつのことだったのでしょうか。 高等学校の時のような気もするし、大学のあった田舎町の駅の前にあった、 喫茶店の名が初めてだったような気もします。 そう、その喫茶店には、私たちとあまり年の変わらない、姿勢のよい美人 のウェイトレスが働いていました。私はほとんど毎日、そこで、コ−ヒ−を 飲み、教科書を読み、ノ−トの整理をしたものです。 木造のがたがた音をたてる図書館より、この喫茶店の方が静かであり、何 より、そのウェ−トレスが時々回ってきては、水を換えてくれ、親しげに甘 い声で話しかけてくれるのがどきどきするほど嬉しかったからです。 そんなある日、いつものように立ち寄ると、その日はママさんがコ−ヒ− を運んできました。「あれ!彼女はお休み?」って聞くと、「あら、やめた わよ。」っていうのです。 返答に困って黙っていると「恋人なのかとばかり思ってた。」と言われて しまい、私は頬を赤くしてうつむいてしまいました。その人のいなくなった 「カトレア」は急に色あせた花のように思われ、以後足が遠くなってしまい ました。 2003/02/01 塙 泉 |
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